[ vol.009 2022年12月 ] 根室海峡の向こう側/小熊幸子

先日、2011年まで研究の場にしていた根室海峡を11年ぶり、野付より北は14年ぶりに眺めました。羅臼町でご講演される先生のスポンサーという立場での同行でしたが、晴天でベタなぎの海峡越しに見える国後島を前に、小舟にも乗らず、サンプル採りも無いのが、なんとももったいないと思いました。当方が北海道区水産研究所のオホーツク海定線N-lineに行っていた頃は、探海丸(2008年退役)は中間ライン間際を走っていたので、国後島はより大きく見えました。

でも、隣で眺めていた先生は、海峡の幅はもっと広くて国後島はそんなに見えないと思っておられたようで、「(国後島が)こんな近いんやったら、網下ろしてたら、いつのまにか流されてライン超えてしもうたなんてあり得るなぁ…」と、海峡の狭さに驚かれてました。

狭いんですよ。だからこそ、東半分の水が一度も採れなかったことが悔しいです。デッドスローにもできず、バケツが海峡に引き込まれそうな状況でかろうじて表層の1杯ずつ、5点だけ。「数分くらい停めてくれてもいいじゃんね」と当時は思いましたが、その中間ライン際の5点のデータが無かったら言えなかったこともあるので、採らせてもらえただけ良かったです。いつになるか分からないですが、国後島周辺でCTD採水できたら、当時と全然違った論文が書けるだろうなと、将来に期待してます。